巻き網漁に活気 美しい茶畑の山
日向灘に面し、南北に長い宮崎県。その北端のまちが延岡市北浦町。環境省の「快水浴場百選」で、九州唯一の「特選」に選ばれた砂浜「下阿蘇ビーチ」を抱くリアス式海岸の「海の里」である。
「にほんの里100 選」に選ばれる原動力となったのは、美しい風景と県内一の水揚げ高。中でもウルメイワシでは日本一の水揚げ高を誇る、巻き網漁の活気が大きい。家々の軒先に大漁旗がはためく元気な漁師町なのだ。
「海の里」に彩りを添えているのは茶の栽培だ。急峻なリアス式海岸の地形を作る山の山肌に、新芽がきれいに刈り取られた茶畑が広がる。茶山のてっぺんに登り振り返れば、誰しも茶畑の造形美に感嘆の声を上げるだろう。
人の営みが作った里山の絶景だ。
山を開墾し、茶畑を少しずつ山の上まで広げてきた茶農家、木下豊年さん(73)は、温暖な気候を生かして新茶の摘み取り時季が国内他産地より早いのが誇りだ。4 月中頃から品質の良い新茶をどこよりも早く出荷し、「おいしい新茶ですね」という声を聞く時が、開墾の苦労を忘れる時だという。
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北浦町をもう一つ特徴づけるのが、江戸時代後期に開設された「宮野浦八十八ケ所」だ。文政2(1819)年、地元の篤志家が疫病や火災に見舞われた地域の安寧を願って四国霊場八十八カ所の各霊場の土を運び入れ、延岡で石仏を刻み、開設した。リアス式海岸の岬の山々をぐるりと巡る全長約12km の道程。毎年、旧暦3月21 日の弘法大師空海の命日には、県内外の多くの参拝者でにぎわう。「宮野浦八十八ケ所へんろ道守ろう会」代表の漁師、中井一萬さん(61)は、「石仏は、札所ごとに世話する家が決まっている。古里を愛する人たちの心のよりどころです」と話した。
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宿は旅館や民宿、「道の駅」北浦など。問い合わせは、延岡観光協会(0982・29・2155)、延岡市北浦町総合支所地域振興課(0982・45・4238)。
(グリーンパワー2014年1月号から転載)