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ヒガンバナが咲く畦道を歩く
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スギでできた醤油桶が並ぶ蔵
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そうめん作りを体験
「にほんの里1 00 選」の里を歩く「フットパスツアー」を2009年春から続けている。今回の小豆島は31カ所目。台風17号の接近で、内容を大きく変更しての実施となった。
初日午後。島の中ほどにある中山地区は広大な棚田地帯。現在733枚の田んぼがある。稲刈りが終わったばかりの畦(あぜ)にはヒガンバナの赤、赤、赤。稲ワラのほのかな香り。「ああ懐かしい」と参加者。「畦歩きがこんなにわくわくするなんて」
案内は立花律子さん。中山地区に小さな空き家を借りて「こまめ食堂」の看板をあげ、「地元食」を提供しながら小豆島の魅力を発信し続けている。「とれたての棚田米です」。畦歩きから戻ると真っ白いおむすびがひとつ。最高のおもてなしだった。
2日目。台風が速度を上げ、風が出てきた。「醤油の街を歩く」予定をやめ、ヤマロク醤油の工場見学に。5代目当主・山本康夫さんが案内してくれた。醤油を仕込む高さ約2㍍の大きな木桶が、3つの蔵にずらりと並ぶ。全部で60ある。桶の材料はスギ。いちど作ると長持ちする。ヤマロクには100年以上使い続けている桶もある。問題は「新しい桶」だという。醤油桶を作れる会社が、今は大阪の堺に1つしかないのだ。
ヤマロクは09年、この会社で9本の桶を作った。日本では戦後初の醤油桶新調だそうだ。山本さんはさらに、仲間の大工2人と桶作りを習い、つい最近新しい桶を3本作った。2~3年後にあと3本作るという。材料は吉野杉。その縁で、吉野で活動する桶グループとの交流も始まった。
桶にはタガ用のマダケも要る。13~ 14 ㍍の長さが望ましいが、そんな素性のいいマダケは手に入りにくくなってしまった。「自分で竹林も作らないと」と山本さんは思っている。
台風が東海地方に上陸した。安全のため東京方面に帰る参加者が延泊。外に出ると、晴れた夜空に中秋の満月が昇っていた。(海)
=グリーンパワー2012年11月号から転載。写真は立花律子さん提供。