都市近郊の里山 守るモデルに
さまざまな自然環境で調査を続ける環境省プロジェクト「モニタリングサイト1000」(モニ1000)で、里地の重要な調査対象に選ばれているのが穂谷(ほたに)。2005年に始まった調査を通して、里地里山の風景の中に豊かな生物多様性が残っていることが確認されてきた。
例えば植物なら650種前後が自生し、大阪府における絶滅危惧種も20数種が含まれる。タヌキ、キツネ、ニホンザル、ニホンリスなどの在来の哺乳類が生息し、チョウやトンボなど昆虫の種数でも全国的に見劣りはしない。調査員の一人であり、枚方いきもの調査会代表を務める石川新三郎さん(71)は「棚田やため池が維持され、そこに湿地の植物が保全されている重要な場所だ。ノスリやオオタカといった猛禽類(もうきんるい)が見られ、キビタキやオオルリなどの夏鳥が繁殖しており、野鳥の生活にも貴重な環境だ」と話す。
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モニ1000の調査区から少し離れた場所には、約20年前に圃場(ほじょう)整備された農地が広がる。一部は秋に見頃を迎えるコスモスやヒマワリのお花畑になる。これらの花は見るだけでなく、有料(コスモスなら10本100円)で摘み取ることもできる。ここを会場に開かれる10月の収穫祭は、市内や近隣からたくさんの人々が訪れる人気のイベントだ。
穂谷農業振興協議会で要職にある岡本春彦さん(71)は「地域のイメージを高めようと、みんなが協力して始めたのがお花畑だった。次に手がけたのは黒豆栽培。穂谷は夜の冷え込みがきつくて良い豆ができるため、農家の収益増にもつながっている」と語る。
悩みは、タケが広がったりナラ枯れが発生したりしている周囲の森林の手入れだ。整備を続けるボランティア団体に、地域や行政の関係者も加えた森づくり委員会が組織され、定期的に話し合いが持たれている。都市近郊の里山を守っていくモデルに育ちうるかどうか。今後の動きに注目が集まっている。
(グリーンパワー2014年12月号から転載)