6次産業化へ動く ウメ産地
三方五湖(みかたごこ)は五つの湖が連なった美しい湖だ。タモロコやイチモンジタナゴなど日本固有の魚も多く、2005 年にはラムサール条約湿地に登録された。
湖周辺は日本海側最大のウメ産地として知られる。ブランド名は「福井梅」。湖畔や日当たりの良い山の斜面に梅園が広がっている。
福井梅は江戸時代の天保年間(1830年代)、伊良積(いらづみ)地区(若狭町)で見いだされた2品種を元に栽培地が拡大されてきた。しかし、その伝統のウメも「課題は山積み。岐路に立っている」と、県の研究機関で長年、品種育成や栽培技術の普及に携わり、現在は若狭町の特産振興アドバイザーを務める山本仁(じん)さん(62)は危機感を募らせる。
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梅干しや梅酒用の青梅生産に頼ってきた福井梅は、需要の減少や輸入加工品の増加などで販売額が落ち込み、放棄地も目立つようになった。シカの食害にも悩まされる。後継者の育成も課題だ。長男が残っている兼業農家は少なくないが、親世代の栽培技術がうまく伝わっていない。樹齢が進んで生産力が落ちた梅園の更新も急がれる。
産地の再生に向けて山本さんは2014年10 月から、梅農家の跡継ぎを対象に月1回の連続講座を始めた。栽培技術や生産性の向上を目指した特訓だ。新規就農者のサポートもする。梅園の更新を図るため、山本さん自身が関わった新品種の普及にも努めている。
町にはウメを加工し新しい商品にして販売する「6次産業化」の動きがある。でも、これを全ての農家がやるのは難しい。「分業して地域全体で6次産業化するのが良い」と山本さんは思う。福井梅は、一部の農家ではなくみんなの暮らしを支える地域産業であってほしいからだ。湖が生き物の多様性で支えられるように、産地の持続にも、品種や栽培技術や、売り方とか担い手とか、様々な場面での多様化が求められている。
(グリーンパワー2015年2月号から転載)