人が集う 共有林と茅葺き民家
温暖な房総半島南部に位置する平久里下(へぐりしも)。稲作の他、園芸や酪農が営まれる農村部の背後に、地域の財産である共有林約120ha が広がっている。
現在の共有財産管理委員会の前身に当たる施業森林組合は1926(大正15)年の設立。茅場(かやば)や薪炭林(しんたんりん)にスギなどを植え、その木々は戦後の木材不足の時期に伐採され、地域に利益をもたらした。お祭りの屋台の新調や消防車の購入、青年館建設などへの支出が委員会の記録に残る。木材の価格低迷で大規模な伐採からは遠ざかっているが、最近も間伐は続けられていて、林内はきれいに整備されている。伐(き)った材を集めて農業ハウスなどで暖房用燃料に活用する仕組みも動き出した。
委員長の池田信雄さん(72)は「いずれまた良い時も来る。その時まで共有林を受け継いでいかなくてはならない」と話す。地域の若者たちへ声を掛け、一緒に境界確認や除伐をするようにしている。
▲ ▲ ▲
江戸時代後期に建てられた茅葺(ぶ)き民家を借り、「ろくすけ」と名付けて活動拠点としたのはNPO 法人の千葉自然学校。10 年ほど前から利用し始め、屋根を少しずつ葺(ふ)き替えたり、座敷に囲炉裏(いろり)を復活させたりしてきた。今では千葉市など都市部から、子どもやシニア世代が自然体験、ボランティア活動のために訪れる。草刈りや竹林の整備を引き受けるなど、地域との交流も盛んだ。「地域の人が先生となり、地元の産物を使いながら、お金が回る仕組みを『ろくすけ』を拠点に作っていきたい」と事務局長の遠藤陽子さん(76)。
近くには、修験の山である伊予ケ岳(336.6ⅿ)や南総里見八犬伝ゆかりの富山(とみさん)(349.5ⅿ)、菅原道真をまつる平群(へぐり)天神社など歴史的遺産が豊かだ。隣接する地域とともに、里道をたどるハイキングコースの整備、自然体験や特産物加工のプログラム実施など、グリーンツーリズムの展開にも力を入れている。
(グリーンパワー2014年5月号から転載)