湧き水こんこん 海の幸豊富
北陸新幹線開業に沸く富山県。「生地(いくじ)」のある黒部市には黒部宇奈月温泉駅ができた。並行在来線(旧JR北陸本線)は第三セクター「あいの風とやま鉄道」となり、人の流れが変わった。
生地は富山湾に注ぐ黒部川河口近くの漁村だった。1889(明治22)年の市制町村制施行で生地町となり、1954 年、桜井町との合併、市制施行で黒部市が誕生。さらに2006年、宇奈月町と合併して新しい黒部市となった。
まちのあちこちでこんこんと湧き水が出ている。飛騨山脈に源を発する急流・黒部川の伏流水の豊富さに「名水の里」を実感する。湧き水場のことを地元では「清水(しょうず)」と呼ぶ。清水は20カ所。このうち18カ所が一般公開されており、住民が日常生活に利用している。観光客も利用できる。もちろん、使い方の決まり・マナーがあり、階段状に流しが設けられている清水では、湧き出し口から順に飲用、炊事用、洗い物用だ。酒造会社の敷地内にある清水は日曜・祝日を除く平日・土曜のみ公開されている。
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黒部っ子たちに水に親しみ、水を愛し、大切にする心を育てようと、毎夏、小学校高学年の希望する児童を対象に「くろべ水の少年団」を結成、海浜から黒部川の下流、中流、上流域の現地を訪れて水質や水生生物などを調べる活動が1992年から続いている。
黒部漁港はまちの中心にあり、近くには海の幸の直売所「魚の駅生地」がある。漁港と海との出入り口に、珍しい可動橋が架かっている。「生地中橋(なかばし)」(全長38m)。1982年に完成した日本最初の「片持式旋回橋」だ。漁船の出入りのために片側のたもとを回転軸にして旋回する。橋のたもとにある管理操作室から、漁船と車や歩行者の動きを確認して操作している。「周辺の民家に立ち退きを求めずに大型漁船も通航できる橋を造れないか」という地域の課題に応えた人々の知恵の結晶だ。
(グリーンパワー2015年5月号から転載)